財産債務調書制度とは?税務調査とどんな関係がある?

一定金額以上の所得や資産のある個人の方は、確定申告をする際に、併せて財産債務調書を提出する必要があります。実はこの財産債務調書と税務調査とは大いに関係があるのです。 今回は財産債務 … 続きを読む 財産債務調書制度とは?税務調査とどんな関係がある?

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一定金額以上の所得や資産のある個人の方は、確定申告をする際に、併せて財産債務調書を提出する必要があります。実はこの財産債務調書と税務調査とは大いに関係があるのです。
今回は財産債務調書制度について税理士が解説します。

財産債務調書制度とは?その記載事項は?

次の①~③のすべての要件に該当する人は、その年の翌年の3月15日までに「財産債務調書」を提出する必要があります。

①所得税の確定申告をしなければならない
②退職所得を除く各所得金額の合計額が2,000万円超である。
③その年の12月31日時点で、3億円以上の財産または1億円以上の国外転出特例対象財産(国外転出時課税の対象となる有価証券等)を有している。

財産債務調書には、財産債務調書と財産債務調書合計表があります。
まず、財産債務調書で、財産債務の区分(土地、預貯金、有価証券など)、財産の種類(普通預金、上場株式など)、用途(事業用、一般用など)、数量、価額(その時点の時価等)、所在及び債務の金額等を財産の種類ごとに記載します。
そして、財産債務調書合計表では、財産の区分ごとに価額の合計額を記入します。

なお、国外財産調書を提出する必要がある方も、財産債務調書の提出義務がある場合は、財産債務調書を提出しなければなりません。ただし、国外財産調書に記載した事項は、財産債務調書に記載する必要はありません。

財産債務調書と税務調査とはどんな関係がある?

財産債務調書を未提出であったとしても、そのこと自体での罰則はありません。
ただし、財産債務調書を未提出である場合や、提出していたとしても重要な事項について記載漏れがあった場合に、税務調査等で、その財産または債務に関して所得税等の申告漏れが見つかったときは、過少申告加算税等がさらに5%加重されることとなります。

一方で、財産債務調書を提出期限までに提出していた場合は、逆に、税務調査等で、その財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが見つかったとしても、過少申告加算税等が5%軽減されることとなります。

このように、財産債務調書にはアメ(インセンティブ)とムチ(罰則)が用意されており、税務調査等で申告漏れが見つかったときに影響してくることとなります。

なお、過少申告加算税等の加算措置・軽減措置の対象は「財産債務に係る所得税等の申告漏れ」に限られます。この「財産債務に係る所得税等」とは、財産債務に関して生じる次の所得に対する所得税等のことをいいます。
①財産から生じる利子所得・配当所得
②財産の貸付けまたは譲渡による所得
③財産がストックオプション等である場合は、その権利の行使による株式の取得に係る所得
④財産が生命保険契約等に関する権利である場合は、その生命保険契約等に基づいて支払を受ける一時金や年金に係る所得
⑤財産が特許権等である場合には、その特許権等の使用料に係る所得
⑥債務の免除による所得
⑦①~⑥のほか、財産債務に起因して生じるこれらに類似した所得

つまり、過少申告加算税等のすべてが加重措置・軽減措置の対象となる訳ではありません。

財産債務調書を期限内に提出しなかったときや誤りがあったとき

財産債務調書を期限内に提出しなかったとき

財産債務調書は原則として提出期限内に提出しなければなりませんが、期限後に提出した場合でも、それが税務調査等により更正や決定が行われることを予知してされたものでないときは、提出期限内に提出されたものとみなされます。そのため、提出期限後の提出であっても過少申告加算税等の軽減措置の適用を受けることができる場合があります。

財産債務調書の記載内容に誤りがあることがわかったとき

提出した財産債務調書の記載内容に誤りや記載漏れがあることが後日分かった場合は、再度、すべての財産債務を記載した上で財産債務調書を作成し、提出することで、訂正が可能となります。

まとめ

財産債務調書制度について解説しました。財産債務調書を提出したから、税務署から狙われやすくなる、ということではなく、あくまで正しい確定申告をしているか、などの確認のために利用されるものです。ルールどおりに財産債務調書を提出しておけば、税務調査で申告漏れを指摘されてもペナルティが軽減されるメリットもありますので、提出義務のある方は忘れずに提出するようにしましょう。