相続税の税務調査が行われる割合は?(大阪国税局発表資料より)

大阪国税局は「平成28事務年度における相続税の調査の状況について」という資料を発表しました。 これは大阪国税局が毎年発表している事務年度(7月1日~6月30日)における税務調査の統 … 続きを読む 相続税の税務調査が行われる割合は?(大阪国税局発表資料より)

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大阪国税局は「平成28事務年度における相続税の調査の状況について」という資料を発表しました。
これは大阪国税局が毎年発表している事務年度(7月1日~6月30日)における税務調査の統計情報です。今回は同資料をもとに、相続税・贈与税の税務調査の状況を解説します。

相続税の税務調査(実地調査)の状況について

平成28事務年度に大阪国税局管内で行われた相続税の実地調査の件数は1,954件で、前年(1,958件)とほぼ同じとなっています。

大阪国税局が発表した別資料「平成28年分の相続税の申告状況について」によれば、平成28年分の相続税の申告件数(相続税の申告書の提出に係る被相続人数)は17,287人となっています。期間が違うので厳密な割合ではありませんが、参考値として、実地調査の件数を相続税の申告件数で割ると、11.3%となります。つまり、相続税の申告をすると、10%強程度の確率で税務調査が行われていることとなります。これは法人税や所得税で税務調査が行われる割合と比較すると高い確率であると言えます。

税務調査が行われた件数のうち、申告漏れ等の非違があった件数は1,667件で、85.3%の割合です。前年も85.6%ですので、ほぼ横ばいです。税務調査が入ると、かなり高い割合で申告漏れ等が見つかっています。

なお、調査1件当たりの申告漏れ課税価格は3,016万円で、追徴税額は623万円となっています。

税務調査で申告漏れが見つかった相続財産の金額の内訳

税務調査で申告漏れが見つかった相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等が218億円と一番多く、次に有価証券78億円、土地54億円となっています。

現金・預貯金や有価証券が多いのは、いわゆるタンス預金といった金融機関に保管していない現金や有価証券が見つかったり、名義預金・名義株式などを相続財産として認定されたものが多くあることが窺えます。また、土地に関しては、相続税の申告の際に、土地の評価を誤っていたことが判明したことによるものが多いでしょう。

税務調査で申告漏れがよく見つかる相続財産というのは、逆に考えると、申告にあたってはそれだけ注意しなければならないものであると考えられます。申告をするときには、誤りがないことかどうかをしっかりとチェックしておく必要があります。

無申告でも税務調査は行われる

税務当局は、公平に課税が行われるように、情報の収集・活用など無申告事案の把握のための取組を積極的に行っており、無申告であっても税務調査は行われます。平成28事務年度に行われた無申告事案に係る税務調査(実地調査)の件数は132件、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は11,572万円、追徴税額は1,290万円にもなっています。
実地調査件数は対前事務年度比で111.9%となっており、無申告事案に力を入れている状況が窺えます。

贈与税の税務調査(実地調査)の状況について

平成28事務年度に大阪国税局管内で行われた贈与税の実地調査の件数は751件です。
大阪国税局が発表した別資料「平成28年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によれば、平成28年分の贈与税の申告件数は97,600人で、そのうち申告納税額のあるものは73,800人となっています。期間が違うので厳密な割合ではありませんが、参考値として、実地調査の件数を贈与税の申告件数(税額のあるもの)で割ると、1.01%となります。贈与税の申告に対して税務調査が行われる確率は非常に低いものとなっています。

ただし、贈与税の税務調査が行われた件数のうち、申告漏れ等の非違が見つかった件数は720件で、95.9%の割合です。贈与税の税務調査が行われると、ほとんどのケースで申告漏れ等が見つかることになると言ってもよいでしょう。

まとめ

大阪国税局が発表した資料をもとに相続税・贈与税の税務調査の状況を説明しました。
相続税や贈与税の税務調査が行われるとかなり高い確率で申告漏れ等が見つかっています。これは、税務当局が事前にしっかりと情報収集・分析をしてから税務調査を行っていることとを示しています。税務調査があっても問題のないようにするためには、納税者側としてもしっかりとチェックをしたうえで、申告しなければなりません。