消費税の還付申告に対する税務当局の確認・調査が強化

2022年1月21日、国税庁は、「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」という文書を公開しました。今後、消費税が還付となる申告については、申告後、申告内容が適正かどうかにつ … 続きを読む 消費税の還付申告に対する税務当局の確認・調査が強化

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2022年1月21日、国税庁は、「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」という文書を公開しました。今後、消費税が還付となる申告については、申告後、申告内容が適正かどうかについての調査・確認が強化されることとなります。

 

なぜ消費税の還付申告に対する調査が強化されるの?

輸出取引が多かったり、高額な設備投資を行った場合などでは消費税が還付される申告となることがあります。消費税の制度上のものなので還付となること自体は問題ないのですが、よくニュースでも見かけるとおり、不正な手段を使って還付を受けようとする事案も少なくありません。

例えば、輸出免税制度を悪用した不正還付事案では、貴金属・宝石の卸売業者が、安価な宝石を利用して、これを国内で高額で仕入れ、高額で輸出販売したように見せかけて、多額の消費税の還付を受けようとした事例などが見つかっています。

消費税の不正還付に対応するため、2021年には主要税務署に「消費税専門官」が配置されるなど体制の強化が図られています。

このような悪質な事案以外でも、課税取引・非課税取引の区分誤りや固定資産等の取得時期の誤りなども多いようです。

こういった不正事案などを防ぐため、納税者に対して、国税当局による調査の強化と還付金の支払までの期間が長期となる可能性があることについて理解を求める今回の文書を公開することになりました。

ちなみに、不正に消費税の還付を受けた場合やその未遂となった場合には、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金の刑罰が設けられています。

 

 

今後どのようになるのか?

国税当局が確認等の必要があると判断した場合には、還付金の支払いが保留され、確認が終わるまで還付がされないこととなります。

輸出免税で還付となる場合には輸出許可証やインボイス等の写し、高額な設備投資を行ったことにより還付となる場合は契約書や請求書等の写しなど、取引の実態の確認できる資料が求められたり、税務調査が行われることもあります。

また、還付申告の原因の確認にあたっては個別具体的な各種の事情に応じた対応が行われます。そのため、取引の相手方への確認がとれないなど取引の実態の確認が難しい場合や、金銭の動きの確認が困難な場合、証拠書類が適切に保管されていない場合などは、その確認のため、長期間にわたって、還付が保留されることもあります。

 

いずれにしても還付申告をして還付金がなかなか入ってこないような場合には国税当局から追加書類の提出依頼などの連絡がありますので、その連絡を受けて対応しましょう。連絡の内容がよくわからない場合には税理士に相談するとよいでしょう。

国税当局が必要な確認を行った結果、問題ないと判断された場合は、遅滞なく還付が行われます。

 

 

国税当局の調査強化への対応

輸出免税の書類保存要件に注意

不正を行っていなければ特に問題はありません。国税当局側から連絡があり、証拠書類の提示を求められた場合には、速やかに対応するとよいでしょう。

輸出販売をしたことにより還付となる場合は、問題のない取引を行っていたとしても、輸出許可証など輸出免税を受けるために必要な書類を備えて置かなければ還付を受けることができなくなります。輸出免税の要件を確認して、必要な書類は必ず保管しておくようにしましょう。

 

日頃から税務調査に備えて問題のない会計処理を

また、税務調査が入る確率も高くなるでしょうから、通常以上に会計処理等に気を配り、税務調査で問題のないような会計処理をしておく必要があるでしょう。

 

還付保留の長期化に備えて十分な運転資金を確保しておく

さらに、還付保留となる期間は正確にはわかりませんから、資金繰りで還付金をアテにすることはできません。還付保留が長期間にわたることにも備えた十分な運転資金を確保しておくようにしましょう。

 

 

まとめ

消費税の還付申告に対する調査が強化について解説しました。不正を行っていなければ特に問題はありません。しかし、取引自体は問題がなくても、書類が不足していること等で還付を受けることができないようなことも起こるため、そのような不備がないように注意しましょう。