2024(令和6年)年1月1日以降、税務調査等の際に会計帳簿を提示しなかった場合、過少申告加算税や無申告加算税が加重されることになります。今回は、帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置について解説します。
Contents
帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置とは?
青色申告・白色申告いずれの場合でも、事業者には一定の会計帳簿を作成し・一定期間保存しておく義務(記帳義務)があります。記帳義務の適正に履行させるようにするため、2022年(令和4年)度税制改正において、帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置が設けられることとなりました。
帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置の概要
税務職員から税務調査等にあたって、「売上げ(業務に係る収入を含む。)に関する調査に必要な帳簿」の提示等を求められたにもかかわらず、帳簿の提示をしなかったり、帳簿に売上げが正しく記載されていないなど一定の場合には、帳簿に本来記載等をすべき事項に関する申告漏れ等に対して課される無申告加算税または重加算税の割合が10%または5%加重されることとなります。
この措置は、2024年(令和6)年1月1日以後に法定申告期限が到来する所得税、法人税(地⽅法人税を含む)、消費税から適用されます。したがって、税務調査等が2024年1月1日以後に行われる場合であっても、法定申告期限が同日前に到来している分の申告は対象となりません。
一定の場合と加重される割合は次のとおりです。
帳簿の提示等をしなかった場合 | 10% |
帳簿への売上⾦額の記載等が、本来記載等をすべき⾦額の1/2未満だった場合 | 10% |
帳簿への売上⾦額の記載等が、本来記載等をすべき⾦額の2/3未満だった場合 | 5% |
ただし、過少申告加算税や無申告加算税に代えて重加算税が課されることとなった場合、重加算税には本措置に基づく加重はありません。
次の個人事業主の事例で見てみましょう。
本来あるべき売上高 2,000万円
帳簿に記載していた売上高 800万円
この場合、帳簿への売上金額の記載(800万円)が、本来記載をすべき売上高(2,000万円)の1/2未満であるため、申告漏れとなっていた1,200万円(2,000万円ー800万円)に対して追徴される所得税額に課される過少申告加算税の割合が10%加重されることとなります。また、消費税も同様の考え方に基づいて加重されることとなります。
なお、災害によって帳簿を滅失した場合などには、本措置の適用はありません。
(おすすめ関連記事)税務調査で申告漏れが見つかったときのペナルティ(加算税、延滞税)
本措置の対象となる帳簿は?
帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置の対象となる帳簿は次のとおりです。
青色申告 | 総勘定元帳・仕訳帳 |
白色申告 | 売上帳等(売上げ(業務に係る収入を含む。)が確認できる帳簿) |
これらの帳簿には、取引の年月日・相手⽅・⾦額等といった取引内容が整然とかつ明瞭に記録されている必要があります。そのため、
日々の売上⾦額の合計額のみをノートやメモに記載している場合、原則として、そのノートやメモは帳簿にはあたりません。ただし、それと併せて請求書の控等の書類が保存されており、個々の取引の相手⽅や⾦額が記載されている場合には、この措置の適用にあたっては帳簿として取り扱われることとなります。
また、例えば、不動産賃貸業で、賃貸料のすべてが入金される金融機関口座の通帳に入出金取引を記録し、摘要欄の記載等からそれに対応する賃貸期間・賃借人が分かるような場合には、この措置の適用にあたっては売上帳と解されることとなります。
ただし、いずれの場合も一定の条件を満たしている必要があるため、思わぬ形で加算税が加重されないようにするためにも、取引の年月日・相手⽅・⾦額等の取引に関する事項について記載等がされた帳簿を適切に作成し、保存しておくことが望まれます。
帳簿等はいつまでに提示しなければならない?帳簿等の提示期限
税務調査等で、税務職員から帳簿の提示等を求められた場合に、遅滞なく帳簿の提示等をしなかった場合には加算税が加重されることになります。
税務調査の事前通知がなかった場合でも、税務職員から説明を受けた後、遅滞なく帳簿の提示等がされなかったときは加算税が加重されます。
申告漏れに気づいて自発的に申告した場合はどうなる?
税務調査を受ける前に、申告漏れに気づき、自発的に期限後申告書を提出した場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、期限後申告書を提出した時までに税務調査において税務職員から帳簿の提示等を求められている状況にはありません。そのため、通常の無申告加算税や延滞税はかかりますが、無申告加算税への加重措置の適⽤はありません。
まとめ
帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置について解説しました。この措置が導入されると、無申告の場合や適当に申告をしていた場合などでこれまで以上に重いペナルティが課せられることとなります。正確な会計帳簿に基づき、正しく確定申告をしていく必要があります。