業績悪化による役員報酬の減額をしたときの税務調査での注意点

経営状況が著しく悪化し、やむを得ず役員報酬を減額することもあるでしょう。しかし、その役員報酬の減額が、税務調査で問題となることもあります。今回は、業績悪化により役員報酬を減額したと … 続きを読む 業績悪化による役員報酬の減額をしたときの税務調査での注意点

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経営状況が著しく悪化し、やむを得ず役員報酬を減額することもあるでしょう。しかし、その役員報酬の減額が、税務調査で問題となることもあります。今回は、業績悪化により役員報酬を減額したときの税務調査での注意点について税理士がポイントを解説します。

 

 

経営状況が著しく悪化した場合とは?

業績悪化改定事由があるときは役員報酬を減額することができる

役員給与の定期同額給与については、原則として、毎事業年度一定の時期にしかその額を改定することはできません。しかし、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」(業績悪化改定事由)がある場合には減額改定が可能です。

「経営の状況が悪化したことその他これに類する理由」というのは、具体的な要件が決まっている訳ではなく、判断を伴うものですので、税務調査が入ると、業績悪化改定事由があったかどうかが論点となることがあります。

(関連記事)税務調査で役員報酬が問題にならないようにするためには!?

 

業績悪化改定事由とは?

業績悪化改定事由とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいます。

例えば、財務諸表の数値が相当程度悪化していることや倒産の危機に瀕していることなどが考えられますが、それだけではなく、経営状況の悪化に伴って、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情も含まれます。

「第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情」とは次のようなケースがあります。

イ)株主との関係上、業績等の悪化についての経営上の責任からを減額せざるを得ない場合

ロ)取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、減額せざるを得ない場合

ハ)業績や財務状況又は資金繰りが悪化し、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保するため、経営状況の改善計画が策定され、この計画に役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

なお、これらのケース以外でも、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情がある場合には、減額改定事由となります。

 

将来の業績悪化が不可避のときも減額可能

現時点で、財務的数値が悪化しているとまでは言えない場合でも、役員報酬を減額するなどの経営改善策を講じなかったら、客観的な状況から今後著しく悪化することが避けられないような場合も業績悪化改定事由に該当します。経営改善策を講じた結果として、業績の著しい悪化を避けることができた場合であっても、業績悪化改定事由に該当します。

例えば、主要な得意先が倒産や主要製品の不具合が見つかったことにより、今後売上の大幅な減少が避けられない場合などが考えられます。

ただし、客観的な状況がない単なる将来の見込みに過ぎないときは、業績悪化改定事由には当たりません。

 

 

税務調査で問題とならないようにするためには?

税務調査で問題となるとすれば、「経営状況が悪化したことその他これに類する理由」があったかどうか、です。つまり、会社としては「経営状況が悪化したことその他これに類する理由」があったと考えたとしても、それが認められない可能性がある、ということです。

その場合は、減額後の役員報酬についてしか損金算入することが認められないこととなるため、減額前の役員報酬と減額後の役員報酬の差額の部分に対して法人税等の追徴税額が生じることとなります。

こうならないようにするためには、「経営状況が悪化したことその他これに類する理由」があることを、客観的な事実をもとに、それが必要であることを、具体的に説明できるようにしておく必要があります。また、改善計画等の作成を要する場合は、当然、その改善計画をもとに説明できなければなりません。

 

ポイントは「客観的な事実」と「必要性」です。

 

例えば、同族会社が株主との関係上、役員報酬を減額する場合、通常、同族会社では株主と経営者の関係が近く、業績悪化があったとしても直ちに経営責任が追及されることはありませんから、何らかの特別の事情まで説明できるようにしておく必要があります。

 

つまり、業績、財務数値、資金繰りが悪化していたとしても、役員報酬を減額する必要性があるとまで言えない場合には、業績悪化改定事由による役員報酬の変更は認められないのです。役員報酬を変更する主な目的が利益調整にある場合も認められないのは言うまでもありません。

 

 

まとめ

業績悪化による役員報酬の減額をしたときの税務調査での注意点について解説しました。うまく説明できないために法人税等に追徴税額が出るのはとてももったいないことです。業績悪化により役員報酬を減額したときは、客観的な事実をもとにして、それが必要であることを具体的に説明できるようにしておきましょう。