税務調査に関するQ&A

税務調査を拒否することはできますか?

 国税通則法において税務署(国税局)には質問検査権というものがあり、その権利に基づいて税務調査が行われます。会社などはこの調査を受け入れる義務(受忍義務)があります。そのため、正当な理由なく、税務調査を拒否することはできません。正当な理由とは、災害があったときなど極めて限定されています。つまり、一度税務調査の対象として選ばれると拒否することはできないでしょう。

税務署や国税局の連絡を無視していたら何とかなりますか?

 税務署や国税局から税務調査の連絡があっても、ほとぼりが冷めるまで無視しておけば何とかなるんじゃないか、と思われるかもしれません。しかし、それはとても甘い考えで、無視していればそのうち忘れられるような類いのものではありません。また、税務調査で何か発覚したときの延滞税などのペナルティも余分にかかることとなります。

税務調査はどれくらいの頻度で行われますか?

 税務調査が入る頻度について、明確な基準はありませんが、3年から5年のサイクルで税務調査が入るケースが多いでしょう。一度税務調査が行われて大きな問題が見つかれば、次に税務調査が入る頻度も高まりますし、逆に問題がなかったときは頻度が低くなります。会社設立や開業した場合で売上や利益が順調に伸びていれば、同様に、3年目から5年目くらいに初めて税務調査が入るケースが多いと思われます。

赤字会社でも税務調査はありますか?

 法人税や所得税の税務調査は赤字会社でも行われる可能性はあります。
とはいえ、赤字会社や利益の少ない会社は、税務調査に来ても追加で税金を納める可能性が低いです。そのため、過少申告の可能性があるなどの事情がなければ黒字会社に比べると税務調査が来る可能性は低くなります。
なお、消費税や源泉所得税、印紙税の税務調査は赤字会社でも行われる可能性があります。

更正の請求や欠損金の繰戻しによる還付を請求すると税務調査が入るのですか?

 更正の請求や欠損金の繰戻しによる還付を請求すると調査が行われる、とよく言われます。これは還付するにあたって、税務署が内部の手続きとして審査を行うということであって、必ずしも税務調査が行われる訳ではありません。実際に更正の請求や欠損金の繰戻しによる還付請求と同タイミングで税務調査が来ることはあまりありません。ですので、税務調査が行われる可能性が高まるからという理由で還付請求をためらう必要は何もありません。

税務調査の対象はどうやって決まるのですか?基準はありますか?

 税務調査の対象を選定する際の明確な基準はなく、業種や事業規模、取引状況などを総合的に判断して選定されます。不正が行われる割合が高いといわれている業種では対象に選定されやすいでしょう。事業規模も大きい方が選定されやすいです。売上が急拡大しているような会社も対象となりやすいです。また、法人や個人が申告した情報はすべて国税庁のシステムに登録されています。さらに資料せんや支払調書などの情報もそこに登録されます。集まった情報から不正や過少申告の可能性が高いという先として選定されることもあります。
なお、最近は実調率を高めようと、一件あたりの調査に割く時間を減らしてでも、より多くの会社・個人事業主に接触しようという傾向にあるようです。

税務調査の実地調査の日程調整(変更)はできますか?

 税務調査には社長や税理士が同席する必要があります。予定を合わせないといけないため、緊急を要するような調査でない限りは日程を変更してもらうことは可能です。
ただし、日程を変更できるといっても、繁忙時期だから数ヶ月後にして欲しい、とかいうリクエストを聞いてもらうのは難しいでしょう。せいぜい1ヶ月以内の範囲で、候補日を提示して調整することとなります。

税務調査の実地調査の期間はどれくらいですか?

 税務調査の実地調査(会社や事業所に調査官がやってきて行う調査)は、会社や事業所の規模にもよりますが、2日~3日程度であることが多いです。個人事業主やサラリーマンに対して行われる場合は半日から1日で終わることもあります。調査官は2名程度で、若手の職員とベテランの職員のコンビのケースが多いでしょう。
実地調査が行われる時間は、10時から16時まで、うち12時からの1時間はお昼休憩というケースが一般的です。

連絡なしに抜き打ち(無予告)で税務調査が入ることはありますか?

 ほとんどのケースで税務調査が入る前に事前通知があります。
ただし、何かしらの不正の兆候があると見られた場合には、連絡なしに抜き打ち(無予告)で税務調査が入ることもあります。
飲食店などでは、事前に客を装って来店し、後日そのときの記録とお店が残している記録を照合するなどの手続きが行われることもあります。

社長は同席する必要がありますか?

 会社の概要や経営状況、特定の取引についてなど、社長にしかわからないこともありますので、税務調査期間中、社長が調査官と打合せをできる時間は設けておく必要があります。
しかし、それ以外の時間は、経理の担当者や税理士が対応しますので、社長が同席していただく必要はありません。

税務調査の結果はいつわかりますか?通知はありますか?

 税務調査は、会社や事業所など現場で進められる実地調査が終わったとしてもそれで完了となる訳ではありません。書類が持ち帰られ、税務署内でも検討や内部の審査、決裁が行われます。必要資料に不足があれば追加で提出しなければなりませんし、論点が残っていれば実地調査終了後にも折衝が必要です。税理士がついていれば、税理士が対応します。これらに要する期間は、ケースバイケースですが、概ね1ヶ月から2ヶ月程度となるでしょう。
税務調査で特に問題がなければ「是認通知」が送られてきます。問題があれば通知が送られるケースや、口頭で勧奨を受けて修正申告をするケースがあります。

何年分遡って調査されますか?

 通常の税務調査では、過去3期を対象として行われることが多いです。ただし、調査を進めている中で遡っての調査が必要と判断された場合は期間が延長され5年分となることもあります。たとえば、過去3期を調べたら、4期以前が無申告であることがわかった場合や明らかに申告税額が少ないことがわかった場合などです。
なお、所得隠しなど悪質な行為を行っているとみられた場合は最大で7年間遡って調査が行われる可能性があります。

税務調査で帳簿や資料を持ち帰りされることはありますか?

税務調査で、調査官が現場で帳簿や資料を見切れなかったり、持ち帰って検討することが必要と判断した場合は、持ち帰りされることはあります。もし、それらが使っている資料でなければ困る場合はその旨を告げて、コピーをとってもらうか、現場で確認してもらうなどの対応を求めればよいでしょう。
そうでない場合で持ち帰る場合は、調査官が預り証を発行し、会社はそれを確認した上でサインをします。後日、返却される場合にはその預り証を税務署に渡します。

紛失した資料があるのですがどうしたらいいですか?

税務調査で、紛失した資料がある場合は注意が必要です。
システムに記録が残っていてそれをもとに再度作成できるものなどであればよいのですが、記録がないまま資料を再度作成しては架空または偽りの資料を作成することになってしまいます。そのため、新しく資料を作成するのはやめておいたほうがよいでしょう。一つの資料がなくても、その他の資料で補完できる場合もあります。他の資料で補完できないときは、ある取引事実を認定するにあたって税務署が推計することとなります。
例えば、飲食店で売上のレシートが残っていないようなときに、他の判断材料から、おおよそこの程度の売上だろう、という金額を弾き出します。このようなときは税務署が有利になるように(=納税額が多くなるように)推計される可能性もあります。そのため、いろいろな判断材料を集めて、納税者にとって適正な納税額となるような主張を行うことが必要です。税理士に依頼されるときは、税理士がそのような反論をしてくれることでしょう。

いわゆる「お土産」は必要ですか?

税務調査で、よく「お土産」を用意しておいた方がいい、と言われることがあります。調査官へのお土産とは、追徴課税されるためのネタです。調査官も組織の人間でやってくる以上は何か結果が求められます。そのため、何も問題がないよりは軽い問題があった方がスムーズに進むのではないか、と言われるのです。
しかし、このような考えは違っています。何も問題がなければ堂々と調査に応じればよいのです。問題がないことがわかれば、今後、税務調査が入る確率も減ることとなるでしょう。

税務調査官の対応に不満がありますがどうしたらいいですか?

税務調査官には嫌なイメージを持ってしまいがちですが、ほとんどの方は丁寧に対応してくれます。威圧的な対応をされることもあまりありません。
細かい、とか、しつこい、とかいうことはありますが、それが仕事なので、ある程度は受け入れてあげましょう。

手帳は見せないといけないですか?

税務調査の中で役員や従業員の行動記録が問題となることがあります。
そのようなとき手帳の提示を求められることもあります。
問題が明確で、該当する記録を見せればすぐに解決するようなときは、その部分だけ見せてしまって解決するとよいでしょう。
しかし、手帳は会社の管理する帳簿書類ではなく、個人の私物であることが多いです。そのため必ず提示しなければならないものには該当しないと考えます。
見せることに抵抗がある場合は、なぜ手帳の提示が必要なのかを調査官に確認してみてください。目的が明確になれば、手帳を見せなくても、代わりの書類を提示すれば済むこともあります。

キャビネットの中や机の中は見せないといけないですか?

税務調査でキャビネットの中や机の中を見せて欲しい、と言われることがあります。 これは書類がきっちりと整理保存されているかどうかや提示していない重要な書類がないかどうかなどを確認するためです。同意なしに勝手に見ることはありませんが、断ると何か隠しているような感じになり、スムーズに調査が進まなくなってしまいます。
そのため、事前にキャビネットの中や机の中を整理しておき、不要なものは置かないようにするなどしておきましょう。また、契約書など印紙が必要となるような書類が入っていれば印紙が貼られているかどうかも確認しておく必要があります。

昼食や飲み物は出した方がいいのですか?

国税局や税務署の職員は公務員ですので、食事の提供などは受け付けません。調査の際は、お昼時間(12時頃)になれば、自分たちから「食事に行ってきます」と休憩をとります。
しかし、お茶やコーヒーなど飲み物の提供はしても問題ありません。会議などの際にお茶やコーヒーを提供することは一般的で、社会通念上もこれが賄賂などにはあたらないと考えられるからです。ですので、提供してもよいですし、逆に提供しなければならないものでもありません。暑い時期や寒い時期に調査が行われることもあります。飲み物程度は提供してもよいのではないか、と考えます。

個人の通帳まで見せないといけないのですか?

調査官から社長の個人の通帳を見せてください、と依頼されることがあります。
これも応じた方がよいでしょう。 もし見せなかったとしたら、調査官は「何か隠しているかもしれない」と考えて、金融機関に照会して取引明細を入手します。これには少し時間がかかります。直接通帳を見せても見せなくても、結局は取引記録を見られることになります。そうであれば、先に見せて、スムーズに調査を進めた方がよいでしょう。

書類のコピーを頼まれたら、しないといけないですか?

調査官から書類のコピーを頼まれることがあります。
これには基本的には応じた方がよいでしょう。
応じなかった場合は、書類を税務署に持ち帰りされることになるので、預り証の収受や返却時の手続きなど少し面倒になってしまいます。持ち帰って余分なところまで見られてしまう可能性もあります。
コピー代は、税務調査終了時に調査官から精算を言ってくるケースもありますし、精算しても少額となる場合は言ってこないケースもあります。もちろん精算を求めることはできますが、この場合、税務署側も会社側も現金の収受の手続きが必要になります。少額の場合は、精算を求めない方がスムーズに進むのではないでしょうか。・税務調査の日程を変更してもらうことはできますか?
数ヶ月後にして欲しい、などといった変更はできませんが、提示された日が仕事の都合などで対応できないときは、調整してもらうことはできます。

事業と関係のない質問には答えないといけませんか?

税務調査の受忍義務がありますので、税務職員からの質問には回答しないといけません。 しかし、中には事業と関係のない質問、プライベートに踏み込んだ質問をしてくることもあります。このようなときは「この質問はどういう目的ですか?」と聞いてみてください。
一見、税務調査とは関係のないような質問でも、納税者のことを把握して、何か隠していないかを探ったりするような目的のものもあります。目的を聞いて納得できれば、答えることができる範囲で答えてください。それでも回答したくない質問であれば、「後日税理士に確認してから回答します。」と答えればよいでしょう。

追徴税額が出ても税金を払う資金がないときはどうしたらいいですか?

税務調査を行うのは通常、税務署の個人課税部門や法人課税部門です。そこが税務調査を行い、修正申告をしたり更正の処分を受けることによって追徴税額が確定します。追徴税額が確定すると、通常は納付書をもとに納税しますが、払うことができないときは税務署の別の部門(徴収部門)に相談してください。そこで分割で支払うなど支払計画について相談します。ただし、税金には決して低くない率で延滞税がかかりますので注意してください。

税務調査の時、預金通帳は隠した方がいいですか?

税務調査があるとほとんどのケースで預金通帳の提示を求められます。このとき、「預金通帳はありません。」と隠してもあまり意味はありません。税務署は銀行に取引照会をすることができ、銀行は税務署からの照会が入ると必ず取引履歴を開示します。ただし、この手続きには少し時間がかかるので、それだけ税務調査の終結が遅れます。税務調査期間が伸びると、延滞税も多くかかることになりますし、余計な心労も抱えなる期間が長くなります。預金通帳は隠しても無駄です。