査察とは?不正資金の隠し場所、脱税の方法は?(大阪国税局の報道発表資料より)

大阪国税局は「平成29年度 査察の概要」という報道発表資料を公表しました。 今回は、この資料を基に大阪国税局が平成29年度に行った査察について解説します Contents1 査察と … 続きを読む 査察とは?不正資金の隠し場所、脱税の方法は?(大阪国税局の報道発表資料より)

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大阪国税局は「平成29年度 査察の概要」という報道発表資料を公表しました。
今回は、この資料を基に大阪国税局が平成29年度に行った査察について解説します

査察とは?

査察とは、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及するために行われる強制調査のことをいい、国税局の査察部(いわゆるマルサ)が担当します。時間をかけて内偵調査を行い、脱税をしていることを掴んだうえで、裁判所から捜査令状を取得し、突然、強制調査にやってきます。捜査令状があるため、家や事務所など関係のある場所は勝手に捜査され、関係のある書類は差し押さえされます(いわゆるガサ入れ)。また、場合によっては、逮捕されることもあります。
このように、基本的に任意調査(とはいっても、正当な理由がない限り税務調査を拒むことはできませんが)である税務調査とは抜本的に異なります。

平成29年度の査察の概要

平成29年度に大阪国税局が査察調査に着手した件数は40件となっています。
また、平成29年度以前に着手した査察事案で、平成29年度中に処理(検察庁への告発の可否を判断し処理)した件数は40件で、そのうち29件について検察庁への告発が行われ、告発率は72.5%です。検察庁への告発が行われた事案が多かった業種は「建設業」が11件、「不動産業」が3件となっています。
脱税額でみると、平成29年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で28億円、そのうち告発分は25億円で、告発事案1件当たりの脱税額は8千8百万円となっています。
これをみると、脱税額が数千万円となる案件が、査察案件になるものと考えられます。
なお、平成29年度中に一審判決が言い渡された件数は28件で、すべてに有罪判決が出されているようです。

不正資金はどのように隠しているのか?

同資料に脱税した不正資金の隠匿場所なども記載されています。
多くは、現金や預貯金、FXの取引証拠金として留保されていたほか、不動産や貴金属、高級腕時計の取得、国外カジノでのギャンブル等の遊興費などに使われるなどしていたようです。隠し場所は様々のようですが、自宅横の物置に設置した金庫、床下収納に設置した金庫、ベッド下に置かれた金庫などに現金が隠されていた事案がありました。
査察が入ると、「たまり」といって、脱税資金がどこにあるのかということがまず調査されます。「たまり」の有無が脱税を裏付けることにもなりますので、査察調査のポイントとなってきます。

査察で見つかった脱税事案

同資料には、次のような脱税事案が記載されています。

・バイク用品の輸出等を行っていた会社が、休業状態であるにもかかわらず、架空仕入と架空輸出売上を計上し、不正に多額の消費税の還付を受けていた。

・機械製品等の輸出を行う会社が、国内売上を輸出売上と仮装し、不正に多額の消費税を免れるとともに、消費税の還付を受けていた。

・墓石仏壇仏具販売会社が、不正協力者に架空の業務委託費等を計上した後、協力者から現金を戻させることによって、多額の法人税を免れ、不正資金は会社の代表者がプールしていた。

・産業廃棄物収集運搬処理を行う会社が、不正協力者に対して架空仕入を計上し、多額の法人税を免れ、不正資金は会社の経営者がプールしていた。

・高級腕時計を、グループ会社の中で何度も国内と国外で循環させる方法によって、架空の国内仕入と架空の輸出売上を計上し、不正に多額の消費税の還付を受けていた。

いずれも架空の売上や仕入を計上することによって、税金を免れたり、還付を受けたりする悪質な事例が紹介されています。最後の高級腕時計の事案では、脱税事案としては過去最高の懲役7年6か月の実刑判決を受けることとなったようです。

大阪国税局では、平成30年度も、消費税受還付事案、無申告ほ脱事案、国際事案に重点を置いて、査察に取り組むことが示されています。

まとめ

大阪国税局の報道発表資料をもとに、査察の概要やどんな不正事案があったのかを解説しました。査察はあくまで悪質な脱税事案に対して行われるもので、税務調査とはまったく異なります。ほとんどの人は査察が行われることはありませんので、心配しないでくださいね。