税務調査で役員への経済的利益が給与認定されるとどうなる!?

役員に対する経済的利益が税務調査で問題となることが多くあります。そもそも役員に対する経済的利益とはどんなものなのでしょうか?また、なぜ税務調査で問題になるのでしょうか?税理士がポイ … 続きを読む 税務調査で役員への経済的利益が給与認定されるとどうなる!?

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役員に対する経済的利益が税務調査で問題となることが多くあります。そもそも役員に対する経済的利益とはどんなものなのでしょうか?また、なぜ税務調査で問題になるのでしょうか?税理士がポイントを解説します。

 

役員に対する経済的利益とは?

法人税法上、金銭等で支払う役員報酬はもちろん役員に対する「給与」となりますが、金銭等で支払った報酬でなくても役員に対して特別な利益(経済的利益といいます)を与えたときはそれも役員に対する「給与」とみなされることとなります。

ここでの「経済的な利益」とは、『実質的にその役員に対して給与を支給したのと同じ経済的効果をもたらすもの』のことをいい、例えば、次のようなものが挙げられます。

(1) 資産を贈与した場合のその資産の時価

(2) 資産を時価より低い価額で譲渡した場合の時価と譲渡価額との差額

(3) 債権放棄や免除した場合の債権の放棄額等

(4) 無償または低額で土地や家屋の提供をした場合の通常収受すべき賃貸料と実際に徴収した賃貸料の額との差額

(5) 無利息または低率で金銭の貸付けをした場合の通常収受すべき利息と実際に徴収した利息との差額

(6) 被保険者及び保険金受取人を役員とする生命保険契約の保険料の全部または一部を負担した場合の保険料の負担額

会社が持っている資産を役員に対して、無償で贈呈したり、相場よりも安く売ってあげたりすると、役員は「得」をしますよね。物を貸すときにタダで貸したり、相場よりも安く貸してあげたりするときも同様です。また、お金を貸した時の金利も同じです。

この役員が「得」をした部分というのが、役員に対する「経済的利益」となり、役員に対する「給与」とみなされることとなります。直接の報酬ではないけれども、実質的に役員に給与を支払ったことと同じでしょ、と考えられるためです。

 

役員に対する経済的利益が給与に認定されるとどうなる?

税務調査で、役員に対する経済的利益が役員に対する「給与」と認定されるとどうなるのでしょうか?

この場合、主に次のような影響を受けることが考えられます。

①所得税等の源泉徴収漏れ

役員に対する経済的利益について、所得税の源泉徴収が必要となります。

例えば、経済的利益が100万円であると認定された場合には、その分に相当する所得税の源泉徴収を追加でしなければならないこととなります。

②役員給与の損金不算入

認定された役員に対する「給与」が定期同額給与に該当しない場合や、認定された結果不相当に高額な役員報酬となる場合などは、損金算入することができなくなります。

例えば、1,000万円相当の会社の資産を役員に100万円で譲渡した場合、会社の決算書には固定資産売却損900万円が計上されているはずです。固定資産売却損は通常は損金算入することが認められていますが、これが役員に対する給与とみなされることになると、役員給与の損金算入要件を満たしていない限り、損金算入することができなくなります。そのため、否認された額に対する法人税等の追徴税額が生じることとなります。

役員に対する給与として認定された経済的な利益の額が毎月おおむね一定している場合には定期同額給与に該当し、法人税の計算上、損金の額に算入することができます。例えば、役員に不動産を貸している場合で、その賃料が相場よりも安いときは、経済的な利益の額は毎月一定しているものと考えられます。

一方、そうでない場合には、経済的な利益に相当する金額は損金の額に算入されないこととなります。

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役員に対する経済的利益でも課税されないもの

ここまで説明したように、役員に対する経済的利益は原則として役員に対する給与と認定されることとなります。

しかし、法人が役員等に対して経済的な利益を与えた場合であっても、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、法人がその役員等に対する給与として経理処理しなかったものであるときは、給与として扱われません。

所得税法上経済的な利益として課税されないものには、例えば、通勤手当や社宅家賃、創業記念品等の支給や商品・製品等の値引き販売、レクリエーションの費用などで一定の要件を満たすものが挙げられます。これらについて給与ではなく、福利厚生費などとして経理処理していた場合は、役員に対する給与としては扱われません。

 

まとめ

税務調査で役員に対する経済的利益が役員給与に認定されないように注意しましょう。会社の資産を役員に無償で譲渡したりするのはよくないことというのは何となくイメージがつきそうでしょうが、役員にお金を貸した時に利息を受け取っていなかっただめ問題となった、ということは比較的多くありますので、注意が必要です