飲食業の税務調査のチェックポイント

飲食業は現金商売で一般的には売上をごまかしやすい業種と考えられています。実際に大阪国税局が平成29年に発表した資料(平成28事務年度における法人税・消費税の調査事績)でも、不正発見 … 続きを読む 飲食業の税務調査のチェックポイント

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飲食業は現金商売で一般的には売上をごまかしやすい業種と考えられています。実際に大阪国税局が平成29年に発表した資料(平成28事務年度における法人税・消費税の調査事績)でも、不正発見割合の高い業種に「その他の飲食業」が入っています。
今回は飲食業の法人や個人事業主が税務調査を受けるときのポイントを税理士が解説します。

飲食業の税務調査のチェックポイント

1.売上は正しく計上されているか?

現金商売である飲食業は売上を隠すことが容易にできてしまいます。
そのため、税務調査では、売上が正しく計上されているかどうかについて、様々な方法でチェックされることとなるでしょう。

・レジレシートなどと帳簿上の売上を照合し、帳簿の正確性を検討します。
・同業態の飲食業の原価率と比較して、原価率が異常に高くないかを検討します。原価率が高ければ、売上を少なくごまかしていると疑われる可能性があります。したがって、原価率について説明できるようにしておく必要があります。
・実地調査の前に税務調査官が客として店を利用(内偵調査)し、そのときの記録が帳簿に残っているかどうかを確認されます。記録が残っていなければその帳簿は粉飾しているのではないか、と疑われます。それだけではなく、税務調査官は客として来店することによって、その時間はどれくらいの人が入っているか、客単価はどれくらいか、従業員は何人いるか、ということも観察しています。
・上記の手続きで売上が正しく計上されていない可能性があると判断されるときは、さらに現金を隠していないか、と疑われます。場合によっては、オーナーの個人の銀行口座の取引明細を確認されます。不明な入金があれば、それは店の売上現金ではないか、と推測されることとなります。
・掛けでの売上があるときは、掛け売上も漏れなく計上されているかを確認されます。

2.期末時点の材料等は棚卸資産に計上しているか?

期末時点で未使用の材料等があれば棚卸資産として計上する必要があります。
そのため、期末日に実地棚卸を行って、棚卸資産の在り高を把握しておかなければなりません。
飲食業の場合は、大なり小なり棚卸資産は残るでしょうから、計上されていなかったり、計上金額が少ないときは税務調査で問題となる可能性があります。

3.パートも含めて、給料から源泉徴収をしているか?

飲食業の場合は、アルバイト・パートの従業員がいることでしょう。また、入れ替わりも多くなると思われます。そのため、アルバイト・パートについて、源泉徴収をしていなかったり、甲欄を使って源泉徴収していても扶養控除等異動申告書の提出がなかったりすることがあります。しかし、アルバイト・パートも正社員と同様に源泉徴収をしなければなりません。ルール通りに源泉徴収できていないときは、源泉所得税を追加で支払わなければならないこととなります。

4.クレジットカード利用手数料の消費税の課税区分は正しいか?

飲食業であれば、お客様がクレジットカードで代金を支払うこともあるでしょう。その場合、クレジットカード会社からクレジットカード利用手数料が差し引かれて入金されることとなります。このクレジットカード手数料は消費税の非課税取引となり、仕入税額控除することができません。手数料だからと誤って課税取引として処理してしまうケースが多くありますので、注意が必要です。

5.領収書に印紙は貼っているか?

お客様に領収書を交付することもあるでしょう。5万円以上の領収書を交付する場合は、印紙を貼る必要があります。税務調査では、領収書の控と印紙の使用簿・帳簿(総勘定元帳)などと照合することで、印紙を適切に使用しているかどうかについて確認されることがあります。

まとめ

飲食業に対して行われる税務調査では、売上を中心としてチェックが行われることとなります。その場合、様々な観点からチェックされるため、売上をごまかしていた場合は簡単に判明してしまいます。ごまかして税金を減らすのではなく、日頃から正しい会計処理を行い、その上で、必要な節税対策を行っていくことが大切です。