税務調査で問題が見つかると青色申告は取消しされる?

税務調査で問題が見つかると「青色申告が取消しされるのではないか?」と心配になるのではないでしょうか?しかし、税務調査で問題が見つかったから、直ちに青色申告の取消しとなる訳ではありま … 続きを読む 税務調査で問題が見つかると青色申告は取消しされる?

この記事は約5分で読み終わります。

税務調査で問題が見つかると「青色申告が取消しされるのではないか?」と心配になるのではないでしょうか?しかし、税務調査で問題が見つかったから、直ちに青色申告の取消しとなる訳ではありません。今回は、青色申告が取消しされるケースについて税理士がポイントを解説します。

 

青色申告が取消しされるとどうなる?

法人が青色申告の取消しをされると、次のようなデメリットがあります。

①欠損金の繰越控除、欠損金の繰戻還付が適用できなくなる

白色申告のときに生じた欠損金は、翌期以降に繰り越しすることができません。また、欠損金の繰戻還付も適用できなくなります。

なお、青色申告の間に生じた繰越欠損金は、白色申告をする場合でも控除することができます。

 

②青色申告を要件とする特例の適用ができなくなる

30万円未満の償却資産を全額損金にできる少額減価償却資産の特例など青色申告を要件とする特例の適用を受けることができなくなります。

 

このように黒字のときも赤字のときも青色申告の特典を受けることができないというのは大きなデメリットとなります。

なお、青色申告の取消しがされると「青色申告の承認取消通知書」が税務署から送付されてきます。いつから青色申告が取消しになるかはこの「青色申告の承認取消通知書」の中に記載されています。

 

青色申告が取消されるのはどんなとき?

では、青色申告はどのようなときに取消しされるのでしょうか?

青色申告は、税務調査の際に調査官の判断で取消しをすることができるようなものではなく、取消しされるケースは、法律で決められています。また、その指針として『法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)』が設けられており、具体的には次のようなケースに該当すると青色申告が取消しされる可能性があります。

 

①帳簿書類が作成・保存されていないとき

青色申告の要件の一つが帳簿書類の作成・保存ですので、これができていないときは青色申告の取消しの対象となります。

②税務調査で帳簿書類を提示しなかったとき

仮に帳簿書類を作成・保存していたとしても、税務調査でその提示を拒否し、提示しなかった場合は青色申告の取消しの対象となります。これは税務署からの要求に再三再四、拒否したような場合に適用されますので、単にすぐに用意できなくて提示できなかったような場合には該当しません。

③税務署長の指示に従わなかったとき

税務署長は会社の作成する帳簿書類に必要な指示をすることができるとされています(法人税法第126条第2項)が、この指示に従わなかったときは、青色申告の取消しの対象となります。

④隠ぺい、仮装等をしていたとき

税務調査等によって更正や決定がされた場合やそれを予知して修正申告をした場合等で、更正等の後の所得金額のうち隠ぺいまたは仮装の事実に基づく所得金額(不正所得金額)が、当該更正所得金額の50%超であるときは青色申告の取消しの対象となります。ただし、不正所得金額が500万円未満の場合は除かれます。

例えば、本来3,000万円の所得であったところを、隠ぺいや仮装をし、1,000万円として申告していて、それが税務調査等で判明し更正されたとします。この場合の不正所得金額は2,000万円(3,000万円-1,000万円)となり、更正後の所得金額3,000万円の50%である1,500万円を超えているため、青色申告の取消しの対象となります。

欠損の場合も同様です。更正等によって減少した欠損金額のうち、隠ぺいまたは仮装の事実に基づく金額(不正欠損金額)が、当初の申告に係る欠損金額の50%超であるとき等は、青色申告の取消しの対象となります。ただし、不正欠損金額が500万円未満の場合は除かれます。

なお、この要件に該当する場合であっても、その事業年度前7年以内に、次のいずれの要件を満たし、かつ、今後適正な申告をすることを申出したときは、青色申告の承認の取消しが見合わせられることとされています。

イ)青色申告の取消し処分を受けていないこと

ロ)既往の税務調査に係る不正所得金額(不正欠損金額)が500万円未満であること

また、これは隠ぺいや仮装をしていた場合に適用されるものです。例えば、修繕費としていたものが税務調査により資本的支出となったような場合は、たとえその金額が多額であったとしても、隠ぺいや仮装をしていない限り、この要件には該当しません。

⑤2期連続して期限内に申告をしなかったとき

2期連続して期限内に申告をしなかったときは、青色申告の取消しの対象となります。

青色申告が取消しされる理由としては最も多いのではないでしょうか。特に休眠会社の場合は注意が必要です。休眠状態から事業を再開した場合にすぐに青色申告をすることができなります。

 

まとめ

青色申告が取消しされたときの影響や取消しされる場合について解説しました。税務調査で問題が見つかったとしても直ちに青色申告が取消しされる訳ではありません。仮装・隠ぺいなどを行っていなければ、税務調査があったとしても青色申告の取消しについて心配する必要はないでしょう。